真鶴半島 魚つき保安林「お林」
1 お林の歴史
御料林だったころのマツ林
江戸時代、明暦の大火により木材が大量に必要になったことから、幕命により小田原藩に割り当てられた15万本のマツ苗が萱原だった真鶴半島にも植林されました。明治維新後には、皇室御料林として一般の人は立ち入ることはできず、マツ林は見回り人により大切に保護されてきました。明治37年 森林法に基づく「魚つき保安林」に指定され、真鶴町漁業を支える大きな役割を担っています。
昭和22年 御料林は国有林となり、昭和27年には真鶴町に払い下げられ、マツだけではなくクスノキやスダジイなどの巨木が生い茂る混交林となり、真鶴町の神聖なる場所として大切に守られてきました。
昭和40年代に入ると全国的に「松くい虫」の被害が顕著となり、お林のマツも松くい虫被害の拡散を防ぐため、スプリンクラーによる薬剤散布や被害木の伐倒駆除、薬剤の樹幹注入を実施し、マツの保護に努めてきました。
お林を含む真鶴半島の先端部分は、海と沿岸部、そしてお林の連続性が一体となった生態系を有しており、豊かな自然環境の要素が詰まっています。
【お林のあゆみ】
1661年(寛文元年) 小田原藩による松苗の植林。以後、立ち入り禁止の御留山となる。
1800年後半 明治維新後、皇室「御料林」となる。
1904年(明治37年) 森林法に基づく「魚つき保安林」に指定
1947年(昭和22年) 御料林は国有林となる。
1952年(昭和27年) 国有林が真鶴町に払い下げられ、移管される。
1954年(昭和29年) 「神奈川県立自然公園」に指定(特別地域48ha、普通地域90ha)
1960年(昭和35年) 「神奈川県立真鶴半島自然公園」に改称
1963年(昭和38年) 「真鶴サボテンドリームランド」開園
1973年(昭和48年) 松くい虫防除・薬剤散布開始
1979年(昭和54年) かながわの景勝地50選「真鶴岬と三ツ石」
神奈川県指定天然記念物「真鶴半島沿岸に生息するウメボシイソギンチャク
とサンゴイソギンチャク」
1984年(昭和59年) かながわの名木100選「真鶴半島のクロマツ」
1986年(昭和61年) 森林浴の森100選「真鶴岬」
1988年(昭和63年) かながわの美林50選「真鶴半島の森」
1989年(平成元年) 「中川一政美術館」開館
1991年(平成3年) かながわの探鳥地50選「真鶴岬」
1994年(平成6年) かながわの花の名所100選「真鶴半島のガクアジサイ」
2001年(平成13年) 日本の重要湿地500選(真鶴岬周辺沿岸部)
2004年(平成16年) 「ケープ真鶴」営業開始(旧 小田急ケープパレス)
2005年(平成17年) 「お林展望公園」開園(旧 真鶴サボテンドリームランド)
2006年(平成18年) 「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財百選「魚つき保安林と小早船」
2007年(平成19年) 松くい虫被害対策事業 薬剤の樹幹注入へ完全移行
2009年(平成21年) 「遠藤貝類博物館」開館(ケープ真鶴併設)
神奈川県指定天然記念物「真鶴半島の照葉樹林」
魚つき保安林
神奈川県立真鶴半島自然公園(特別地域)
2 松くい虫被害
薬剤の樹幹注入
松くい虫被害とは、「マツノザイセンチュウ」という体調1mmにも満たない線虫がマツの樹体内入ることで引き起こされ、その線虫をマツからマツへ運ぶのが「マツノマダラカミキリ」というカミキリムシです。
お林では、昭和48年から薬剤散布が開始されました。
平成15年度からはより安全で環境に配慮した薬剤の樹幹注入を一部で開始し、平成19年度から完全移行し、薬剤散布は廃止となりました。現在樹幹注入は、真鶴半島の先端部分を11のエリアに分割し、ローテーションにより実施しています。
3 お林調査
お林調査(毎木調査)
平成25年12月真鶴町議会定例会において、宇賀町長が「戦略的土地利用方針」を表明し、真鶴半島先端部分を生物多様性を重視した自然保護ゾーンとして位置付けたのを受け、お林の保全に向けた「お林調査」が平成27年度からスタートしました。
お林調査は、公益財団法人オイスカ、国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 正木隆氏、元林野庁職員 中岡茂氏、一般社団法人 日本森林技術協会等のご支援をいただき、年代別の航空写真による「空からの調査」と現地での「毎木調査」を実施しました。毎木調査は、平成27年度と平成28年度に実施し、延べ367名の一般ボランティア、企業、大学関係者等の皆様にご協力いただき、954本、35種類の樹木を調査しました。参加者の皆様とお林の価値を再認識したのと同時に両調査によってお林の植生や樹木の分布が分かってきたところです。
【お林調査の経過】
■平成27年度
1.毎木調査
2.実施日:平成27年8月4日、8月29日、12月5日、12月6日、12月17日
■平成28年度
1.毎木調査
2.実施日:平成28年7月2日、12月2日、12月3日、12月4日
■平成29年度
1.樹冠長率、形状比調査(マツのみ)
2.実施日:平成29年12月2日、12月3日
■平成30年度
1.樹冠長率、形状比調査(マツのみ)
2.実施日:平成30年12月8日、12月9日
■令和元年度
1.毎木調査
2.実施日:令和元年11月30日、12月1日
■令和2年度
1.樹冠長率、形状比調査(マツのみ)
2.実施日:令和2年12月12日、12月13日
■令和3年度
1.デンドロメーター設置(マツのみ)
2.実施日:令和3年12月11日、12月12日
■令和4年度
1.毎木調査
2.実施日:令和4年12月10日、12月11日、12月12日
4 お林保全協議会
お林調査によってお林の現状が把握できてきた中で、平成29年度に「お林保全協議会」(以下、協議会)を発足し、お林の保全方針について協議しています。
平成30年度第2回協議会(H30年6月27日開催)において、協議会委員である特定非営利活動法人ディスカバーブルー代表理事 水井涼太氏を中心にワーキンググループを設置し、お林の保全方針について取りまとめ、協議会に報告することが確認されました。
ワーキンググループ会議は、平成30年8月21日から計6回開催し、協議会への答申に向けてミーティングを重ね、お林の定義、お林の基本的な考え方(マツについても含む)、お林の価値を高める取り組みについて、基本的な考え方を取りまとめました。
●お林保全方針 ~お林の基本的な考え方~
お林保全協議会では、令和元年7月30日に開催した「第4回 真鶴町お林保全協議会」で、ワーキンググループから提出された報告書をもとに「お林保全方針~お林の基本的な考え方~」を策定しました。
このお林保全方針は、令和元年度実施予定の「お林調査」や「お林保全シンポジウム」を通して町民の皆さんに周知し、年度末には町の「お林保全方針」として定める予定です。
お林保全方針~お林の基本的な考え方~(PDF:968.4KB)
●「お林保全シンポジウム」を開催しました
お林保全協議会では、「お林保全方針~お林の基本的な考え方~」を令和元年度末には町の方針として定めたいと考えていまが、より多くの方に周知させていただき、またお林保全に関心を深めていただくことを目的に「お林保全シンポジウム」を開催しました。
1 日時 令和2年2月1日(土曜日) 午後2時から午後4時まで
2 会場 琴ヶ浜研修センター
3 内容 【第1部】 講演 「お林の今とこれから」
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 正木隆氏
【第2部】 パネルディスカッション「お林の価値を高める取り組みについて」
・パネラー
森林総合研究所 正木隆氏
元林野庁職員 中岡茂氏
真鶴町長 宇賀一章
・コーディネーター
特定非営利活動法人 ディスカバーブルー 代表理事 水井涼太氏
●設定した範囲内のマツにデンドロメーターを設置しました
令和3年12月11日(土曜日)12日(日曜日)の2日間かけて、今年もお林調査を実施しました。
今年度は設定した範囲内にマツに対し調査を行い、今後もお林保全の方向性を裏付けるための重要な調査として実施していくため、より正確で効率的に実施できる「デンドロメーター」を設置しました 。
マツの幹にスチールメジャーやバネを付けています。
道路や遊歩道を歩いていると目に入ることもあるかと思いますが、町の貴重な財産である「お林」を保全していくために設置しておりますので、ご理解とご了承のほどよろしくお願いいたします。
調査風景
デンドロメーター設置
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更新日:2023年02月28日