所信表明(4年間の方針)

 所信表明とは、就任に際しての任期4年間の町政運営方針です。真鶴町議会定例会(2023年11月30日)で表明したものです。

 

【所信表明】

 11月12日付で真鶴町長に就任しました小林伸行です。

 本日は、議会の冒頭にお時間を頂きまして、真鶴町役場の経営を任された地方公共団体の長として、町民の代表である議会のみなさまに町政運営の所信を申し上げたいと存じます。

 

町民みんなのための町長に

 まず、基本的な地方自治への認識から申し上げます。

 日本の地方自治制度は、戦後にGHQの影響下で導入されたため、米国型のモデルとなっています。これは、会社で言えば「監督と執行の分離モデル」、地方自治体で言えば「二元代表制」ということになります。

 わかりやすいよう、会社にたとえながらご説明致します。会社のオーナーが株主であるように、真鶴町役場は真鶴町民のものです。しかし、株主にあたる町民のみなさまはそれぞれ仕事や家庭を持っていてお忙しいので、町役場の経営は代理人に任せます。株主総会で取締役と社長を選ぶのと同様に、選挙で議員と町長を選ぶわけです。プロの経営者として社長、つまり町長を選び、トップが道を踏み外したり暴走したりしないように取締役にあたる議会が道を指し示して監視します。

 社長に執行を一元的に任せ、それを取締役会が監督するので、「監督と執行の分離」と呼ばれます。これは現代のコーポレート・ガバナンスの基本となっています。そして、地方自治体の場合は、これを「二元代表制」と呼びます。

 ただし、二元代表制について「議会と首長は対等だ」という見解もありますが、私はそうではないと考えています。町役場のトップとして執行を担う町長よりも、それを監督する町民代表の議会のほうが、明らかに上だと私は考えています。横並びではなく上下の関係です。こうした認識を持って、町民に仕え、議会に仕える町長として、特定の派閥や特定の主義主張に偏ることなく、町民みんなのための町長になることをお約束致します。

 

タウンマネージャーとしてのファシリテーター型リーダーへ

 また、こうした認識を基に、従来の常識とは違った町長像による仕事の仕方をしていきます。

 町長というものは激務だと思います。日々の決裁、政策立案、町内の各種団体との交流、他の自治体との外交的業務、町民の民意反映、職員・組織のマネジメント等々、私ごときでは身体がいくつあっても足りません。そして過去の経緯もあり、この真鶴町においては町役場の立て直しが急務となっています。そこで、いくつかの対策を講じていきたいと考えています。

 実は、欧米では「町長」が2人いることが一般的です。名誉職としてのメイヤーと実務家としてのタウンマネージャーです。そして、議長がメイヤーを務める場合が多くなっています。これにならって、真鶴町においては私の任期中は議長にメイヤー役をお願いしていきたいと思います。各種式典での祝辞など儀礼的な職務は議長にお任せし、私はタウンマネージャーとして町役場の立て直しと政策反映といった実務に専念していきたいと考えています。

 また、組織マネジメントに長けた副町長を早期に選任するとともに、DX・デジタルを使った業務革新、EBPM・根拠に基づいた政策立案、行政評価に基づく事業マネジメント等のために、任期付職員を積極的に採用していきたいと考えています。なお、他都市のように任期付職員の採用を可能にする条例案は3月定例会までに上程する予定です。

 加えて、真鶴町役場にファシリテーション文化を導入していきます。ファシリテーションとは、円滑に促進するといった意味で、私がこれまでに学んだ中で最も有益なスキルでした。心を傾けて聴く傾聴、違う意見の人とも協力するための意見と人格の区別、他人の時間を奪わない時間管理。こうした考え方と技術は組織の土台となると考えています。そして、私もまた、「俺についてこい」という先導型のリーダーシップよりも、町民や職員の声を聴きながらまとめ上げていくファシリテーター型のリーダーシップを心掛けたいと考えています。

 

町政運営の「3つの基本姿勢」と「3つの連携」

 続いて、町政運営にあたっての大きな方針を申し上げます。それは、「3つの基本姿勢」と「3つの連携」から成ります。

 まず、「3つの基本姿勢」とは、町政運営において重視する価値観です。

 第一に、「オープン」。「ひらかれた町」です。

 情報公開を進め、説明責任を果たしながら、町民参加を進めていきます。

 第二に、「クリーン」。「すっきりした町」です。

しがらみやなれあいを廃し、この間の町の混乱を招いたような不正をゼロにしていきます。

 第三に、「スマート」。「べんりな町」です。

 これまで培われてきた真鶴の民主的な町民性の土台の上に、最新のICT技術を活用して、最先端のスマートタウンを目指します。かつて真鶴は、国内初のまちづくり条例「美の基準」をつくり、小さくとも日本全体を変えた町です。近年は不名誉な状態になってしまっていましたが、日本一効率的で住民満足度の高い町政を実現して、誇りを取り戻したいと考えています。

 

 次に、「3つの連携」とは、町政運営において重視する手法です。

 第一に、「広域連携」です。

 真鶴は、合併ではなく自主独立を選択した誇り高い町です。こんなに個性があって魅力的な町ですから、合併しなかったことは正解だったと、後知恵ですが私は考えています。

 むしろ全国的にも、今の流れは合併ではなく「広域連携」です。他の市町村や県と協力して事業を行うことで、費用を抑えつつ町民サービスを向上することができます。

 そして、行政分野ごとに必要な規模は異なります。浄水、消防、観光など、それぞれの特性に応じて、互いに利益のある最適なパートナーシップを再構築していきたいと考えています。

 第二に、「公民連携」です。「リープ・フロッグ」の考え方で、大きなまちが階段を一つずつ登っているところを、真鶴は民間の力を借りて新しい技術でカエル跳びにピョンと階段を飛び越していきたい。また、「ファースト・ペンギン」の考え方で、海に最初に飛び込むペンギンとなって、民間や国のモデル事業をいち早く手掛けて町民に便利なサービスをドンドン提供していきたい。そのように考えています。

 とりわけ、ケープ真鶴、お林展望公園、琴ヶ浜研修センターについては、早期に「サウンディング型市場調査」を導入します。役場の中で考えても限界があるので、民間の知恵を借りる手法です。ただし、真鶴の規模ではなかなか民間もサウンディングに手を挙げて頂けないと考えられます。そこで、町長自ら全国に営業に歩くほか、コンサルティング会社も活用する考えです。積極的に民間資金と民間活力を取り入れていきます。

 第三に、「町民連携」です。最近の言葉では「オープンガバメント」と言ってもいいかもしれません。

 まず行いたいのが、「町民サウンディング」です。どういうわけか真鶴には人口の割に公共施設が異常に多く、しかも活用されていません。そこで、身近な公共施設や公園の使い方については町民のみなさんから「もっと、こんなふうに使えたらいいのに!」というアイディアを集めます。そうした声をもとにリノベーションするほか、自主管理制度も導入して、使い勝手を良くしていきます。

 

「地固めの2年」と「攻めの2年」

 ただし、取り組みたいことはたくさんあるのですが、当面は少し慎重に進めたいと考えています。初登庁して役場の状況を中から見渡してみると、残念ながら公約に掲げた政策をすぐにドンドン手掛けられるような状況ではありませんでした。まずは内部の体制整備が急務です。そのため、すぐには目に見える結果を出せないことが予想されます。町民のみなさまには大きなご期待を頂いた分、ガッカリさせてしまうかもしれません。

 とはいえ、任期の前半を「地固めの2年」、後半を「攻めの2年」と位置づけています。具体的な成果については任期の後半で形にしていく想定です。

 

町民と一緒につくる町政

 時間をかけて進める分、町民のみなさまとのコミュニケーションは丁寧に行っていきます。

 上場企業が四半期ごとに決算短信を公表するように、私も3カ月ごとに進捗報告を申し上げながら、町民のみなさまから直接ご意見を頂く場を設ける予定です。

 また、就任以降、「町長日記」を自らに課しています。ホームページの「町長室」のページでご確認頂けるようになっています。

 加えて、いわゆる「オープン・ドア・ポリシー」の一環として、町長室にいつでも誰でもお越しになってご提案やご相談を頂ける「町長室開放日」も12月15日を皮切りに定期的に設定していきます。

 町民のみなさまに、公に約束して信を頂き町政運営を託されたわけです。公約に基づく負託の重みを噛みしめながら、行政運営を行っていきます。

 よりよい真鶴づくりのために、町民のみなさま、議会のみなさまには一緒に知恵を絞り、汗をかいて頂けますよう心よりお願い申し上げまして、就任に際しての所信と致します。

以上

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政策推進課戦略推進係

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更新日:2024年02月08日